恐れるな
御影神愛キリスト教会 牧師 瀬古 慎二
皆さんは、自分の人生を振り返って見る時、恐れや不安を感じることはあったでしょうか。おそらく誰もが一度や二度は、恐れや不安を感じたことがあると思います。ある人は、健康のことで、またある人は、経済的なことで、また人間関係や将来について恐れや不安を抱いたことがあると思います。私も数年前に非常に疲れがたまっていた時に舌に白い腫物が見つかった時がありました。その時に素人考えで勝手に「舌癌!?」なんて思ったことがあります。その時には、「舌を切除したらどうなるのだろう。治療費もバカにならないしどうしよう。」と、なんとも言えない不安や恐れを感じたものです。幸い、単なる口内炎ということで何ともなかったのですが、やはり、病への恐れというのは自分にもあるものだと感じたものです。
いずれにしても、人それぞれ不安や恐れを感じる時というのはあるものだと思います。しかし、そんな私たちに主イエスは、こう言われるのです。「恐れるな」と。なぜ、主イエスはこのように言われるのでしょうか。それは「私が共にいるからだ。」というのです。聖書の中で主イエスがこの言葉を言われた場面の一つに弟子たちがガリラヤ湖で船に乗っていた時のことがあります。その時、船に乗っていた弟子たちは、風のために前にも後ろにも進めずに苦しんでいました。そこへ何と湖の上を歩いてくる人の影があったのです。弟子たちは恐れて「幽霊だ!?」と声を上げました。しかし、次の瞬間、彼らはよく知っている声を聞くのです。それは主イエスの声で「しっかりするのだ、私である。恐れることはない。」という語りかけでした。そして、彼らは主イエスだと分かると彼を船にお迎えするのでした。そうすると風も静まり彼らの心に平安が訪れたのでした。
この出来事は、私たちの人生を象徴しているようです。私たちは、恐れと不安に心が騒いでしまう時がありますが、そこに主イエスは来て下さって「しっかりしなさい。私があなたと共いる。恐れることはない。」と言って下さるのです。そして、その声を聞いて主イエスを私たちの心にお迎えする時、嵐は静まり心に平安がやって来るのです。
ノーベル平和賞を受賞したマーティン・ルーサー・キングという牧師がいます。この方は、奴隷解放後も、なお実態としてアメリカ南部で行われていた人種隔離や差別を、撤廃するために尽力した牧師です。彼はこの問題と向き合い、戦っていく中で命を狙われるようになってきました。そのときの心境を、彼は、ある説教中で赤裸々に語っています。「人種差別と戦う委員会が明日ある。ただ、自分は恐怖に囚われている。自分はよい。しかし、妻やたった一人の赤ちゃんまで命を狙われている。その中で、どうしようもなく怖くなってしまっている。でも神様、明日みんなの前では笑っていきたいんだ。リーダーである自分が恐れていたら、みんなが動揺してしまうから。」彼は本当に眠れない夜の苦しみの中で、「神様どうか助けて下さい」と祈りました。その時に「マーティン・ルーサー・キングよ。私はあなたと共にいるのだ」と、主イエスのメッセージが彼の心に語り掛けてきたそうです。それを励みとして、彼は恐れから解放されて戦いに向かっていったそうです。
今日も「恐れるな。私はあなたと共にいる。」と主イエスは、あなたに語っておられます。主イエスと共に生きる人生の素晴らしさをぜひ知ってください。