2020年12月「喜びのおとずれ」
御影神愛キリスト教会 名誉牧師 杉本満子
新しい生命の誕生、それは素晴らしいこと、そして、喜ばしいことですね。
今年、私の身内でも新しいいのちの誕生がありました。二人目の曾孫の男子の誕生でした。予定日が近づいてきたら、いつ連絡がくるかと、毎日毎日待ち望みました。両親、祖父母、曾祖父母またその周辺の人々に待ち焦がれつつの誕生です。私たちにとっては大きな喜びです。
さて、今からおよそ2000年前、ユダヤの国(現在のイスラエル)のベツレヘムと言う村に一人の男の子が生まれました。「毎日世界中で何万人もの男の子が生まれているのに、何故その子だけが取り上げられるのですか?」と問われるかも知れません。実はその赤ちゃんは、特別な赤ちゃんだったからです。この赤ちゃんの誕生は、それより700年近くも前に、預言者によって預言されていたのでした。それは、人々の罪を赦して、神の子とするために、神御自身が人間の身体をとって、人として、救い主・メシヤとしてこの地上に誕生すると言うことでした。この神様の約束の成就としての誕生でした。多くの人々は救い主・メシヤの誕生を待ち望んでいました。しかし、それは何時のことか、誰も知りませんでした。予定日は知らされていなかったのです。ですから人々のメシヤ待望は漠然としたものでした。
しかし、ある時、ナザレという村に住んでいた、心の美しい一処女の許に天使が神様から使わされて参りました。そして言ったのです。
「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます。・・・あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう」ルカ1:28.31~32
マリヤは恐ろしくなって、私にはヨセフと言う婚約者は居ますが、まだ結婚をしていません。「どうしてそんなことがあり得ましょうか」と尋ねました。すると
「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生れ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう」ルカ1:35
と言われたのです。マリヤは素直にその御使いの言葉を受け入れたのです。神の御子の誕生ですから、それは、それは立派な美しい宮殿での誕生と思われるかも知れません。しかし、現実はそれとは真逆の環境でした。
当時ユダヤの国は、ローマ帝国の支配下にありました。そこでローマ皇帝アウグストは、人口調査をするために、「ユダヤ人は全員自分の故郷に帰るように」と命令を出しました。そこで、ヨセフもマリヤも自分の郷里ユダヤのベツレヘムへと帰って行ったのです。と言うことは、彼らだけではなく国中の人が故郷へ故郷へと帰っていたのですから「民族大移動」が始まったのです。道も宿も一杯の人。日本のゴールデンウイークのようだったかも知れません。ヨセフは身重のマリヤを気遣いながら、マリヤを家畜に乗せてゆっくりと移動して行ったことでしょう。だから彼らが遅れてベツレヘムに到着した時には元気な人々は、すでに宿屋に到着して、旅の疲れを癒していたことでしょう。だから、ヨセフはどんなに探してもすべての宿は一杯でその夜泊まる宿を見つけることは出来ませんでした。だんだん日も没し暗くなり、冷え込んできました。そこでようやく一軒の家畜小屋を借りることが出来たのです。そして、その晩神の御子イエス・キリストは誕生したのでした。そこには、ヨセフとマリヤ以外にイエス様の誕生を喜ぶ人はいませんでした。しかし、天においては大きな喜びがあったのです。その喜びの訪れを天の御使いたちが持ってきました。そこは真っ暗な野原でした。そこでは、当時最も貧しい仕事と言われていた羊飼いたちが一晩中、羊を守るために寝ずの番をしていました。真っ暗な原野に突然眩しい光が射してきたのです。そして、天使からのメッセージが語られたのです。
「恐れるな、見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。きょうダビデの町(ベツレヘム)に、あなたがたのために救い主がお生れになった。この方こそ主なるキリストである。あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである。」ルカ2:10~12
というメッセージでした。それと同時に大勢の天使が現れて、神様への讃美を歌い歓びを表したのです。羊飼いたちはびっくりしたことでしょうね。彼らは天からの眩しいばかりの光を見たのです。そして、神様からのメッセージと天使たちの美しい讃美を聞いたのです。夢を見ているのかと思ったでしょうね。しかし、それは、現実だったのです。彼らは天使が語られたことを思い出して早速示された家畜小屋に行ったのです。そこには、天使が言った通り、幼な子が飼葉おけの中に寝かされていました。羊飼いたちは、自分たちが待ち望んでいた、神の子救い主が生まれたことを知り、直接その場に行って御子にお会いし、礼拝することが出来たのです。
神の御子キリストの誕生のお知らせは、王や学者や偉い人々に伝えられたのではなく、最も貧しく底辺の人と言われていた羊飼いたちに知らされたのです。彼らはどんなに嬉しかったことでしょう。羊飼いたちは、天使の語ったメッセージを自分たちの目で見、神様の素晴らしい約束の成就を喜んだのです。彼らは、お祝いの品など何も持たずに走って行きました。そして、神の御子にお会いして、礼拝を献げ喜びに満たされて「讃美しながら帰って行った」ルカ2:20と言うのです。神の御子の誕生、そこには飾りもなく、お祝いのプレゼントもありませんでした。が、そこには、救い主の誕生を祝う、喜びと平安と讃美が満ちていたのです。
これが最初のクリスマスです。クリスマスは神の御子の誕生日です。みなさん一緒に、本当のクリスマスを祝いましょう。